医者と子供

疫病で亡くなった人の遺体を数えている医者の所に、一人の男の子がやってきたお話。





子供が言った。「僕のパパとママを返して」


医者は答える。「この中にいるのかい?」


「うん」


「それじゃあ、探してくるがいい」


仕事をすすめるべく、医者は無関心に言い放った。


しばらくして子供は二つの死体を引きずって戻ってきた。


医者は驚いた。


「それが君の両親かい?」


「そうだよ」


子供は無邪気に頭を掻く。


その時医者は始めて気がついた。


子供の体は、既に病に冒されていて、もう助からないことを。


「お医者さん、ありがとう。パパとママを返してくれて、ありがとう」


そう言った後、子供は血を吐いて倒れた。 





 
動かなかった。






医者は涙を堪えられなかった。


子供に冷たくしたことを後悔した。


仮面の下で静かに泣いていた。




一体、あとどれだけこんな悲惨な死を眼にすれば、私は報われるのだろう?





テーマは黒死病です。やっぱり暗いお話だったかな?
ペスト医師というのは、勿論患者の治療をしていたわけなのですが、
それ以外に死者の数を記録したり、患者の遺言者となったりとどちらかと言えば公僕のような
存在だったとか。(Wikipediaより)
容姿からして、悪魔か死神とおもわれがちなようです。
でもそんなお医者さんが大好き。