メイプルストーリー小説 3部 「巡る輪廻」

たぶん今日はこれで終わりです。ううむ、じっくり読んでみたいんだけど・・・




奈零沙「もしかしたら・・・ミリュウ、何かデュナスに言われた?」

リュウ「エエ コノ種ヲモラッタアトスグ・・・」

そこまで言うと、ミリュウは顔色を変えた。

リュウ「タブン私タチハ捕ラエラレテイルカラ逃ゲダセトーーーーーーーー!!」

ヘロン「バカ!でっけぇ声だすんじゃねぇええカモメ!!」

リュウ「ソウイウアナタモ声ガ大キイーーーーーーー!!!」

キラール「で・・・どうやって逃げ出すの?」

奈零沙「たぶん 今エーデルシュタインは転職官以外のレジスタンスの奴らで
    町中パトロールされていると思います・・・」

雪嘩「やつらはレベル160くらいのがざらで私達にはかないそうもないかも・・・」

ヘロン「んなの問題に抱えんなよォ!俺の事誰だと思っていやがんでぇ!」

キラール(たんにそこらへんでヘロヘロしてるやつ)

バト「戦うことで突破は無理そうだな・・・だとすると変装とか?」

リュウ「ソレ面白ソウデスネ!」

オチャマル「拙者は忍術を使うでござる!」

キラール「おいおいまだそんなレベルまで行ってないでしょうよ・・・」

こんなとき、デュナスやアウフヘーベンがいたらいいな・・・
が、私の表情を見て奈零沙は私が何を考えているかわかったようだ。

奈零沙「確かにそうです・・・でも、今は誰かに頼っていたら私達は何も
    できなくなってしまう」

奈零沙の立ち直りの早さには、私も驚いた。
とてもしんの強い子なんだ・・・

オチャマル「ということで変装で決まりでござる!みんなは何に変装するでござるか?」

雪嘩「オチャマル遊び半分でやってるな・・・」

と、そのとき、何かの声がした。

?「あ、変装なら・・・あなた・・・」

なにやら私に向かっていっているようだった。
私は声のするほうに振り向いた。
と、そこにいたのは・・・
私にそっくりな女の子ではないか!

?「やっぱり・・・私はプレイオンです あなたはキラールさんですね?」

キラール「な、何で知ってるの!?」

プレイオン「未炎の知り合いです 顔がそっくりだから・・・ うん まあいいです
      とりあえず、私が身代わりになります キラールさんこれを着て」

なぜ未炎の知り合いまで顔がそっくりなのかはわかないが、
とりあえず彼女の差し出した服を着ることにした。
いわゆる、交換ってやつかな?

キラール「着替えてくるから ヘロン バト覗いちゃだめだよ」

ヘロン バト(誰がお前らなんかの・・・)





プレイオン「わぁ!そっくりですね!」

それは私自身もびっくりするほどだった。
海賊の服を着たプレイオンは見間違えるほど私にそっくりで、
私もプレイオンに見えたと言われた。

奈零沙「とりあえず、キラールさんは変装完了ね これからプレイオンと呼ばなくちゃ」

すると、バトがこんなことを言った。

バト「メカニックって一応海賊なんでしょ?なら俺もこれ操縦できるんじゃ・・・」

バトが指差したのは、気絶したチェキが乗っていた
倒れたメカだ。

ヘロン「そうだな・・・ちょっとやってみるかァ」

ヘロンは起こさないようにそっとチェキをどこかのロッカーに閉じ込め
メカに乗ってみた。

ヘロン「お これ以外といけそうじゃん 楽しいぜ!」

バト「おーい次俺だよ」

こいつらは遊んでんのか・・・
とりあえず 海賊等はメカニックに変装することになった。

雪嘩「そういえば、バトルメイジとフレイムヴィザードって似てる技あった・・・
   ちょっと待ってくださいね!」

雪嘩はバトルメイジの服を探しに行った。

奈零沙「さて・・・後は私とミルをどうするか・・・かな?」

バト「大丈夫!君たちはメカの中に隠れていればいいんだ!」

奈零沙(暑苦しそうだなぁ・・・大丈夫なのかな?)

いろいろと大変だが、とりあえずこれで変装することができた。

ヘロン「じゃあ・・・エーデルシュタイン突破するぜ!」

奈零沙 ミル以外のみんな「わぁあぁあああああああああああ!!」




夜だったが町の中はたしかに人がいっぱいだった。
黒いジャガーに乗ってうろうろしているヤツや、
小さなパトロールカメラみたいのが浮いている。

リュウ「ミツカッタラヤツザキニサレマスネ」

キラール「とりあえずさ、この町から抜け出すことが目的なんでしょ?」

雪嘩「ええ だからレッドドッグの船で外に出るしかないようですね・・・」

私達はそっとアジトから抜け出し、
通りに出た。

キラール(そういえば、町に出たら口笛をふけってプレイオンにいわれたっけ・・・)

私はさりげなく口笛を吹いてみた。
と、そのとき・・・

キラール「わっ!!」

私の後ろから突然ジャガーが現れて、私を背中に乗っけた。
きっとこれはプレイオンのジャガーで手伝ってくれているんだろう。

雪嘩「これに乗ってないワイルドハンターは目立つよね・・・」

隣に大きなメカが2台近づいてきた。
バトとヘロンだ。

キラール「ヘロンって明らかに人間じゃないけどよくごまかせたね」

バト「うん!奈零沙の魔法のおかげだよ!」

キラール「それなら最初からその魔法でみんな変装させればよかったのに」

ヘロン「奈零沙のレベルではあーゆー魔法は何回も使うとかなり疲労がたまるんだ
    だからなるべく変装でやれって」

ところで、これだけメカが動いてて中の2人は大丈夫なんだろうか?
すごく暑苦しいだろうなぁ・・・

イレックス「おい!プレイオン!何をぐずぐずしてるんだ 散歩路1を見張って来い!」

突然後ろから声をかけられたのでわたしはびっくりして飛び上がりそうになった。
よかった・・・変装がうまくきいているみたい。

キラール「えっとぉ・・・散歩路ってどこだっけ?」

イレックス「そんなことも忘れたのか馬鹿者 ずっと右に行けばいいんだよ」

私はしぶしぶジャガーを走らせ雪嘩に、

キラール「あっちのほうで町から出る道がないか探してくるね」

雪嘩「了解 私は左のほうに行ってきますわ」





さて・・・周りに怖そうな人たちがいる中わたしはゼキュアに乗っているにもかかわらず
のろのろと進んでいた。
明らかに周りの人からは変に見えてるだろうなぁ・・・

キラール「ねぇゼキュアさん この町から抜け出せる道ってないの?」

ゼキュア「グルルルルル・・・」

ゼキュアは一声うなると、今まで進んでいた道を猛スピードで突っ走っていった。

キラール「ちょ、早い早い早い早い!!とまってぇ〜〜〜〜〜!!!!」

しばらく走っていると、上のほうに小さな飛行船が見えた。

キラール「え これ もしかしてここから抜け出せるの?」

ゼキュアはそうだよとでもいいたそうに鳴いた。
みんなに伝えてこよう。
あ、でもその前に、これがどこへいくのか確かめなきゃ。
私は恐る恐る飛行船の真下の建物の中へと入っていった。





レッドドッグ「ここは完全に封鎖しなきゃ・・・怪しいヤツが逃げちゃうな」

しまった。
手遅れだった。
そこにいた赤毛の男が飛行船を下ろし、倉庫の中に入れてしまった。

キラール「やばい・・・ということは完全に閉じ込められたってことかぁ・・・」

レッドドッグ「おや?プレイオンそこで何をしてるんだ?」

キラール「あ、いやいやいやちょっとどうしてるのかなって・・・」

プレイオンらしい振る舞い方にしないと・・・
とりあえず時間稼ぎで、

キラール「あのさ、何で今飛行船しまっちゃったの?まだ使う人がいるかも
     しれないですよ」

レッドドッグ「あやしいやつが外に出られないように、とね・・・たぶんやつらは
       変装か何かして俺たちの中に紛れ込んでいるだろうよ」

キラール「ふぅん・・・やつらって ブラックウィングとはまた違うの?」

レッドドッグ「あぁ・・・今夜に限ってブラックウィングが一人もいないんだ
       なんでか知らないけどね・・・」

キラール「一人もいない?そんなこともあるんだ・・・」

と、私が言ったとき・・・
町の通りのほうで声がした。

バトルメイジ「いたぞ!!!あそこだっ!!!」



ヘロン「何やってるんだグズ!」

バト「べ、べつに操縦をミスっただけ・・・」

バトがメカの操縦を誤り、
2匹のゼキュアを押しつぶしてしまったのだ。
もちろんそれで見つかった。

バトルメイジ「やっぱり・・・私達に紛れ込んでたのね!」

ワイルドハンター「もう許さないわよ!!」

黄色のゼキュアに乗った少女が矢をバトに向けてはなった。
まずい!メカの真ん中に当たる!あの中にはミルがいるのに!

バト「ミルゥゥウゥゥゥウゥ!!!」

バトが叫んだ。
が・・・矢はメカのすぐ前まで来ると何かに弾き飛ばされてしまった。

奈零沙「ん〜ったくもう!ミルに何するのよぉ!」

なんと、奈零沙がメカをぶっ壊して中から出てきたのだ。

奈零沙「ミル!いくよ! くらえー!!」

ミル「ぁいよマスター!」

ミルの口から歯車のような炎が出された。
フレイムサークルだ。
いくら低レベルの魔法とはいえ、奈零沙とミルの力では
その威力は何倍にも増していた。

ワイルドハンター「わぁああああ!!」

一人の弓使いの体が炎に包まれた。
その横から戦車に乗った少年がきた。

カニック「俺たちの仲間をこんなにしやがって!!レジスタンスをなめんなよ!」

メカから巨大な弾が飛び出してきた。
しかも連続で!

ヘロン「おっとぉ 威力はなかなかだけど お そ い ぜ☆」

ヘロンはメカから飛び降り、
目にも留まらぬ速さで
5匹のセギュアの腹を爪で引き裂いた。

ヘロン「海賊ならこんくらいでなきゃなぁ?俺が1から鍛えてやるぜぃ」

カニック「ふざけんな!!誰がお前なんかと・・・」

キラール「メカさぁ〜ん うしろだようしろ!!」

カニックが気づき振り向いたときはもう遅かった。
私のひじが彼の顔に命中した。
へへん バックエルボーは気に入ってんだ。
私の隣では 雪嘩がメカニック達に囲まれていた。

雪嘩「その鉄の塊・・・わたしが溶かしてあげようか?」

彼女は杖を高く掲げた。
すると、その杖の先から紅蓮の炎が放たれた。

カニック「あっ・・・あちちち!」

鉄くさいにおいを出しながら 大きな機械は溶けていった。
ねじが外れ、コードが切れ、その場にただの鉄の塊となって崩れ落ちた。

バト「やるじゃん!やっぱつえーなぁ!」

雪嘩「このくらいでなければ、ドレイク達を守ることができないですからね・・・」

キラール「戦場はこっちが有利だよ!あとは残ったやつらを片付けるだけだよぉ」

そのときの私には ここで此方と向こうの立場が逆転するなんて
考えもしてなかった。
そう・・・またしてもとんでもない邪魔が入ったのだ。

ハインズ「まったく・・・残忍にもほどがあるじゃのぉ」

奈零沙「あんたッ!まだいたの!?」

ハインズ「忘れてもらっては困るぞ さて・・・わしの魔法で一発やってやろうか?」

ハインズは手に持っていた水晶をヘロンに向けた。
と、水晶から眩い光がほとばしり、
ヘロンを包み込んだ。
が、彼はこんなの何とでもないという顔をしている。

ヘロン「ケッ・・・まだわかんねぇのかよ 俺には聖属性はきか・・・」

彼が言いかけたそのときだ。
ヘロンの表情が固まり、彼の体に異常が起きた。



ピシピシピシ・・・

不快な音が響いた。
まるで、何かが固まるような・・・それだけではなくて、
何かを蝕むような・・・

ヘロン「グッ・・・こ、こいつは一体・・・!?」

ハインズ「2度も同じ手に引っかかるとでも思っているのかね?年寄りだからって
     なめてはいかんぞ」

そして・・・ついに悪夢が・・・
ヘロンの足がどんどん固まってゆくのだ。
ひび割れた石像のように、そこから灰色に変わっていく。

ハインズ「これは魔法をかけたものを石化させる技じゃ 魔法図書館の奥の棚に
     しまってあった 禁じられた魔法の本に書いてあった」

雪嘩「禁じられた・・・!?じゃあ あなたは掟を破ったんですか!?」

ハインズ「わからんのか?人間には使ってはいけないのだ モンスターを退治するのに
     使ってはいけないとどこに書いてある?」

ハインズが話をしているうちに、ヘロンの体がみるみるうちに石に変わっていく。

ヘロン「う・・・うぁぁああああ!!!!」

苦しそうに頭を抑え、叫び声をあげる。
が、その叫び声は石が割れる音にかき消されてしまった。
そして・・・

それから10秒後に、ヘロンは完全に動かなくなってしまった。

キラール「ま・・・まさか・・・デュナスの次はヘロンまで!?」

私はおびえて地面に座り込んだ。
大切な人を2人も失うなんて・・・
私はこれからどうしたらいいんだろうか・・・
と、そのとき、奈零沙が私の肩を持った。
その後ろに雪嘩も来た。

奈零沙「キラール 大丈夫ですよ・・・ほらこれをみて」

奈零沙はわたしの首にかけている魔法の鏡を私に渡した。

雪嘩「ヘロンをすかしてごらん」

私が言われたとおりに、鏡を通してヘロンをみてみた。
鏡は不透明だろう ガラスみたいに見えるのか?
と、私が思った瞬間・・・
鏡に何かが映った。

キラール「これ ヘロンのシルエットじゃない?」

石になったそのままの姿勢だ。

奈零沙「シルエットの中心をよく見てください」

私はよく目をこらし、
シルエットの中をじっと見た。
と・・・
その中に うっすらと青いものが見えた。
しかも、何か脈打っているようだった。

奈零沙「彼は・・・ただ動けなくなっているだけ・・・大丈夫ですよ・・・」

奈零沙は私のほうをやさしく見つめた。
が、唇がかすかに震えている。
やはり彼女も焦っているのだろうか・・・
デュナスがいなくなった上にコイツまで・・・

ハインズ「かわいそうにのォ あんなやつのことで泣くんじゃない」

ハインズは奈零沙の手をとろうとした。
が、彼女はそれを振り払った。

奈零沙「触らないで!汚らわしい!人殺し!このクズのバカジジィ!」

雪嘩「ドレイク達もたくさん犠牲になった・・・なのに泣かないでなんて最低ですよ!」

奈零沙と雪嘩がハインズに杖を向けた。

雪嘩「さぁ・・・ドレイク達の仇・・・とってやるわよ!」

雪嘩の目からは涙がこぼれ出ていた。
奈零沙も涙をこらえているようだった。
そして・・・

カイリン「キラール・・・悪い子ね・・・」

私の頭の上に雫がたれた。
やさしく、子供を思うような涙だった。

キラール「カイリン様!な、なぜここに・・・」

カイリン「あなたにはもううんざりだわ・・・期待してたのに」

すると突然、カイリン様はヘロンに銃を向けた。

カイリン「こいつさえ・・・こいつさえいなければ!!!」






ダギューーーーーーーーンッッ!!




・・・ここは・・・懐かしいノーチラス・・・
さっきまで私は何をしていたんだろうか?
どこか別の場所にいたような気がするが・・・
とりあえず見慣れた廊下を進んでいった。

キラール「あ、リドさん!」

リド「キラールちゃん!お久しぶりねぇ〜元気にしてた?」

キラール「ぴんぴんしてましたよ! ぁ・・・お手伝いしましょうか?」

リド「あら〜相変わらずいい子ねぇ!じゃ、その辺雑巾で拭いてもらえないかしら?」

私はそばにあった雑巾で埃だらけの床を思いっきりこすった。

キラール「ジャックは元気ですか?」

リド「ええ まーだハナミズたらしながらめんどくさそうに手伝ってたわよ
   今は寝室でギャリコと一緒に寝てるでしょうよ」

キラール「そうかぁ・・・今度はエビルアイのしっぽで2人とも起こしてやろうかな」

リド「あなたも変わらないわねぇ 前よりはずっと強くなったけど」

そして、リドさんはモップをバケツの中に入れ、床を掃除した。

リド「カイリン様もアナタを気に入っているそうね?将来が楽しみだって」

キラール「そうですか・・・」

リド「どうしたの〜?さっきから暗い顔して 悩み事?もしや恋人ができたとか?」

キラール「リドさんったら そんなわけないですよ〜」

私は顔では笑っていた。
でも本当は・・・何かおかしかったのだ。
確かに今までカイリン様は私のことをたくさんほめてくださった。
私をインファイターにしてくれた。
私はカイリン様がとても好きだ。
しかし・・・私の記憶の中ではこの言葉が消えなかった。

『キラール・・・悪い子ね・・・』

『あなたにはもううんざりだわ・・・期待してたのに』

どこから来たのかわからないが
この言葉がカイリン様の声で頭に焼き付いていた。
一体、私は何をしたんだろう・・・
カイリン様をあれほど慕っていたのに・・・

キラール「リド・・・さん 私は大丈夫ですよ 心配・・・」

リドさんには元気に見せるように、何気に話してみた。
私の隣ではリドさんが笑っていた。



しかし・・・



その笑顔は凍りついていた。
死んでいた。

キラール「リ、リドさん!?どうしたんですか!?」

私はリドさんをゆすった。
が・・・リドさんは私が触ったとたん、砂のように崩れ落ちてしまった。

キラール「ハッ・・・・・・!こ、これは!?」

暗黒の魔法使い「迎えに着たぞ キラール いや 未炎よ・・・」

私が後ろを向くと、そこにはあのときの黒い人の形をした炎があった。




暗黒の魔法使い「人形の魔法が切れるぞ・・・もう・・・」

私が気がついたときにはもう遅かった。
私の体がメッキがはがれるようにどんどん消えていくのだ。

キラール「い、いやぁああっ!わたしは・・・魔物になんてぇえええ!!」

さけんでも無駄だった。
体の外の皮膚がなくなった後、私の体は徐々に縮んで行き・・・
小さなわら人形となった。
その人形が真ん中から真っ二つに割れた。

暗黒の魔法使い「さぁ・・・そろそろお前も・・・」

二つに裂けた人形のなかから 私の魂がとび出していった。
魂はだんだん大きくなり・・・やがて人の形になった。

暗黒の魔法使い「それがお前の本当の姿だな 未炎」

顔は私だ。
しかし、着ている服は奇妙なものだった。
よく冒険者たちが着ている「影縫いの衣」に似ているが
色が暗いコバルトブルーと黒だった。
しかも裾は煙のように波打っていた。
私の背中には大きな透き通る翼が生え
その後ろで漆黒の羽が舞っていた。

暗黒の魔法使い「魔物の一歩手前に来たようだな・・・過去の記憶は思い出したか?」

未炎「思い出したけど・・・私は絶対あんたの僕にはならないぜ」

暗黒の魔法使い「もうこの運命から逃げることはできない・・・さぁ いくぞ」

黒い炎が私の体を包む。
痛くもなんともない。
だが・・・


今までの思い出が壊れていくような気がした。


こいつは、私の記憶をすべて消し去ろうとしているんだ。
もう・・・だめかもしれない・・・何も思い出せない・・・
と、そのとき、私の頭のなかである言葉がよぎった。

未炎「ヘロン!!!!!!」

暗黒の魔法使い「何だ!?」

未炎「私は煮ても焼いてもどうでもいい ただ、私を魔物にした後、みんなだけは絶対に
   傷つけないと約束してくれ!それと・・・ヘロンを元に戻せ!
   生き返らせるんだ!」

暗黒の魔法使いは不気味な笑みを浮かべた。

暗黒の魔法使い「1つ目の約束は守れないな・・・お前は記憶がなくなる お前の仲間
        のことを忘れる だから私があいつらを殺せと命令すれば
        お前は何のためらいもなく奴らを殺すだけだ」

そうか・・・私が魔物になればみんなのことは誰も保障できない。

暗黒の魔法使い「だが・・・お前の2つ目の頼み・・・かなえてやってもよいぞ」

未炎「本当!?」

暗黒の魔法使い「ああ!私の忠実な部下として蘇らせてやるぞ!!フハハハハハハ!」

な・・・なんだって!?
話が違うじゃないか!

未炎「彼は生き返らせた後、クリムゾンウッドに戻してやれよ!」

暗黒の魔法使い「アイツは手放すには惜しい力を持っている・・・ぜひとも
        仲間にしたいものだ」

未炎「なら・・・ここでお前を殺してやる!!」

私は何かの呪文を唱えた。
なぜこんな呪文を知っているのかは分からないが魂の力なのだろう。
すると、私の手はいつの間にかブレイドと短剣を握っていた。

未炎「早く来いよカスめ!!」

暗黒の魔法使い「ふん・・・やるのか?いい度胸だな」




私は暗黒の魔法使いへと突進して行った。
ファイナルスラッシュだ。
実際私のレベルではこの技は覚えていないはず。
これも私の体が魂だけになっているためなのだろうか・・・

暗黒の魔法使い「ふふ・・・なかなかの威力だな やはりお前は私の部下にふさわしい」

未炎「だーれがお前の奴隷になるっつったぁ!?」

私は手に持っていた双剣で暗黒の魔法使いを切り裂いた。
が・・・それはただ宙をきっているだけだった。

暗黒の魔法使い「お前は私を触ることはできない・・・実体が無いからな」

未炎「じゃぁ・・・幽霊みたいなもんなの!?」

暗黒の魔法使い「私の体は世界中の生き物の怨念 恨み 憎しみから成り立っているのだ
        お前なんかに切られる事は・・・」

暗黒の魔法使いは皮肉っぽく笑った。
だが・・・次の瞬間彼は表情を変えた。

暗黒の魔法使い「クソ・・・やつか!?」

未炎「やつって?」

すると突然、私の後ろから強い風が吹いた。
振り向くとそこには・・・

未炎「あのときの!!」

ノーチラスで暗黒の魔法使いに襲われたとき、
助けに来てくれた大きな鳥じゃないか!!
しかも、鳥の背中に凛々しい少年が乗っている。
年は・・・15,6歳くらいだろうか?

少年「未炎殿!大丈夫でござるか!?」

少年は私に手を伸ばした。
この声、どこかで聞いたことあるような・・・
ハッ!!もしや!

未炎「オチャマル!?何でそんな姿に!?」

オチャマル「そうでござる!でも今は説明している暇なんて無いでござる!」

そういうと、オチャマルは私を鳥の背中に乗せ、鳥に呼びかけた。

オチャマル「早く時空のさく裂を作ってこの世界から逃げるでござる!」

未炎「ここは暗黒の魔法使いが作った世界なの?」

オチャマル「アイツはカイリンがヘロンを撃った瞬間キラール殿を自分の世界に
      連れて行ったでござる そしてキラール殿はその中にいるうちに
      人形に戻ってしまったでござる」

突然いわれても頭の中が・・・
とりあえずここから逃げ出すらしい。

鳥「クゥウウウウウ!!」

大きな鳥は一声鳴き、上に向かって破壊光線みたいなものを放った。
と、その光線が当たったところに風穴が開いた。

暗黒の魔法使い「待て!!逃がしはせんぞ!」

オチャマル「後でぼっこぼこにするでござる!今はこれでもくらえでござる!」

オチャマルはどこに隠しておいたのか手裏剣を取り出し、
暗黒の魔法使いに投げつけた。
あまりダメージを与えていないようだったが、
その間に私達を乗せた大きな鳥は風穴を通り抜け、元の世界に戻っていった。





オチャマル「未炎殿・・・大丈夫でござるか?」

私はオチャマルの声によって起こされた。
元の大きさのオチャマルだ。
ここは 木の上??
下を見下ろすと見回りロボットがうろうろしている。
そうか・・・散歩路1のどんぐりの木の上にいるんだ。

オチャマル「申し訳ないでござる 下にいては見つかってしまうから・・・」

未炎「ううん 大丈夫だよ・・・」

奈零沙 雪嘩 「あっ!未炎!生きてたぁー!」

私の隣には雪嘩と奈零沙がいた。
その後ろではバトが少し驚いてわたしを見ている。
3人とも徹夜で私のことを見守っていたようで、少しやつれていた。

奈零沙「どう?新しい体の調子は」

未炎「新しい体?」

そういえば、キラールの体は人形に戻ってしまった。
私は恐る恐る自分の体を見てみた。
と、次の瞬間

未炎「なにこれーーーーーーー!!!!」

雪嘩「か、かわいいかなと思ってピノキオにしてみたんだけど・・・」

雪嘩と奈零沙の魔法でピノキオの人形体に私の魂を宿らせたのか!
でもこれはさすがに・・・

未炎「ブレイドが重くてもてないよ せめてもっと大きくしてくれません?」

奈零沙「ん〜・・・だったらこんなのもあるけど」

奈零沙が取り出したのは・・・

奈零沙「じゃじゃーん!実物大イエティぬいぐるみだよー!」

未炎「それだったらピノキオのほうがまだマシ・・・」

んなのいつ作ったのか・・・
でもそっくりでなかなかかわいい。
裁縫上手だなぁ。
これを体にすることはできないが・・・
と、そのとき私は大事なことを思い出した。

未炎「ヘ、ヘロンは!?ヘロンはどうしたの!?カイリン様も!」

雪嘩「あ・・・実はですね・・・」

雪嘩の話によると、
カイリン様がヘロンを撃った後、彼は粉々に砕けてしまったそうだ。
そこに暗黒の魔法使いが来て私とヘロンの欠片を闇の光の中に入れてしまい
カイリン様やハインズ、レジスタンス等をどこかに吹き飛ばしてしまったらしい。

未炎「なるほど・・・ あ、後もうひとつ」

奈零沙「何?」

未炎「私が暗黒の魔法使いの世界に閉じ込められていたとき、助けに来てくれた
   オチャマルは何であんな姿なの?それとあの大きな鳥は?」

オチャマル「それは拙者が話すでござる」

オチャマルが小さな足で胡坐を組んだ。
そして・・・信じられない話をしたのだ。

オチャマル「実はこれは仮の姿なのでござる あの大きな鳥は・・・ミリュウでござる」

未炎「え!?じゃあ、ミリュウは霊鳥だったの!?」

オチャマル「そうでござる・・・今まで自分の本当の姿をキラール殿に見られたら
      きっと嫌われてしまうだろうと隠していたんでござる」

オチャマルの後ろでは、ミリュウが小さくなって震えていた。

オチャマル「大丈夫でござるよ 未炎殿はそんなことでは驚かないでござる」

リュウ「ホントウニ・・・私ヲキライニナリマセンカ・・・?」

リュウの目は涙目だった。
私は彼女をそっと手のひらに乗せ、ミリュウの涙をぬぐった。

オチャマル「未炎殿の魂はあやつの世界から出るとこの世界の皆には見えなくなって
      しまうでござる でもミリュウはその魂を感じることができ、
      未炎殿の魂をここまで導き、人形の中に入れることが出来たでござる」

未炎「そっか・・・そういうことだったんだね」

バト「ま、とりあえず キラール・・・いや未炎が戻ってきたのはよかったなぁ」

奈零沙「心配なのは・・・ヘロンですね」

未炎「あの、実はそのヘロンのことなんだけど・・・」

私の言葉に、その場が静まった。

未炎「暗黒の魔法使いが言ってた 自分の部下として蘇らせるって・・・」




リュウ「アイツヲ・・・テシタニ!?」

未炎「そうなの・・・あんな馬鹿なお願いするんじゃなかった・・・
   生き返らせてなんて・・・」

奈零沙「で、でも結局どっちにしろヘロンを悪として蘇らせるかもしれないですよ?」

バト「それもそうかもね ヘロンが砕けた瞬間を狙ってきたみたいだから」

雪嘩「まぁつまり、暗黒の阿呆使いはヘロンを自分の世界に連れてっちゃって
   よみがえらせようと?」

ミル「阿呆使い・・・こんどはボクが看板もつね」

バト「おいおい作者同士しかわかんない話してんじゃないよ・・・」

未炎「とりあえず、そういうことなんです・・・」

沈黙が流れた。
デュナス アウフヘーベン さらにヘロンまでとなると・・・
もちろん奈零沙や未炎のショックも半端ではない。
ドレイク達もたくさん犠牲になってきた。
シグナス騎士団 転職官にくわえ暗黒の魔法使いか。
そしてヘロンが敵にまわるとなると・・・

バト「そうとう・・・ヤバイなぁ」

奈零沙「こっちも何か味方つけないと・・・あ!!そうだ!」

奈零沙の顔が輝いた。

奈零沙「私の知り合いに英雄のみ・・・」



たすけてくださいーーーーーーーーーー!!



奈零沙の声は何かの叫びによってかき消された。
なんだ!?
声は散歩路2の方面から聞こえてきている。

未炎「な、なに!?」

奈零沙「やばい!行かないと!」

バト「ぁ〜正義のお嬢様には付き合ってらんないよ〜」

ぶつぶつバトが文句を言ったが、奈零沙はきにもせず
声のするほうへ走って行った。





雪嘩「こ、これは・・・!」

散歩路3。
ここにはいつもはレベル20程度のモンスターがいるはずだった。
が、今のここは見たこともない竜のようなモンスターがうろついている場所へと
変わっていた。
モンスターはある1つの場所に群がっていた。
雪嘩が魔法でモンスターたちを焼き払い、
その中心へ進んでいくと・・・

少女「ハッ!た、助けてくれたんですか!?」

一人の少女が縄で縛られていた。
しかもその子は私にそっくりなのだ。
装備、武器、さらには身長、顔まで・・・
唯一違うといえば装備の色が赤で統一されていることだ。

未炎「大丈夫ですか!?これは一体・・・」

雪嘩「未炎・・・そんなことより私達・・・」

私が気がついたときにはもう遅かった。
私達は竜に囲まれていた。




この竜たちは
私達よりもずっと強いようだ・・・!
レベルは、ざっと100くらいだろうか?

雪嘩「これは・・・まずいですね・・・」

未炎「私こんな格好じゃ戦えませんよぉ」

何せ、私はいま仮の姿のピノキオになっている。
こんなんじゃまともには戦えない。

奈零沙「とにかく、時間稼ぎですよ!さぁこっちに来てください!」

奈零沙は少女の手を引っ張り、安全なところへ連れて行こうとした。
が、その前に竜の放った火柱が立ちはだかる。

奈零沙「し、しまった・・・」

2人は火に囲まれていた。
じりじりと日は2人に近づいてくる・・・

ミル「だめだぁ ボクの吹雪じゃ・・・」

と、その上から巨大な竜が襲い掛かってきた!
鋭い爪で2人を引き裂こうとする!
もうだめだ、と思った次の瞬間。

?「はぁああぁあああっ!!」

竜の首が飛んだ。
血しぶきが飛び散る。

?「大丈夫?奈零沙さん」

奈零沙「あ・・・あなたは!」

奈零沙が立ち上がった。

奈零沙「アランのみずささん!どうしてここが・・・」

みずさ「奈零沙さんがさっき私のことを呼ぼうとしたからですよ おまけに・・・」

凛々しいアランの少女は竜たちをきっと睨みつけた。

みずさ「この中に・・・暗黒の魔法使いが混ざっています」

雪嘩「なんですって!?」

バト「通りで・・・普通の竜とは違うと思った」

未炎「ここは、早く逃げないと・・・」

とそのとき、私にむかって炎が放たれた。
逃げようとしたが、もう遅かった。
私の体は炎に包まれ、木の人形は灰になった。

リュウ「マズイー!!魂ノヤドルカラダガナクナルト未炎様ハ昇天シテシマイマス!」

仮の体は焼け落ちたが魂はまだこの世でふわふわしているようだ。
リュウにはそれが見えるのだろう。
が、ふわふわしてるのはいいがどんどん私の体が上に上っていくような気がする・・・

奈零沙「は、早く戻ってきてー!」

未炎(私も戻りたいけど、体が勝手に・・・!)

すると、ミリュウの体が輝き始めた。
それと共に、オチャマルの体も大きくなっていった。

オチャマル「いまいくでござる未炎殿ーーーーーーーーー!!」

オチャマルは大きくなったミリュウにひらりと飛び乗ると
リュウは大きく羽ばたき、こっちに向かってきた。
どうやらオチャマルとミリュウには私の魂が見えてるらしく、
捕まえることが出来るようだ。
オチャマルが私の魂を見つけ、手を伸ばしつかもうとした。
が・・・そのとき。

暗黒の魔法使い「またおめおめと来たな・・・ヒヨコ」

黒い影が現れ、そのオチャマルの手をはたいた。

リュウ「ワタシハミリュウデス!!ヒヨコ扱イシナイデクダサイ!」

暗黒の魔法使い「ふっ・・・まあいい これで未炎の魂は私のものだぞ」

気がつくと、私は黒い檻の中に閉じ込められていた。
暗黒の魔法使いの世界にいたときのような不思議な姿になって。

みずさ「出たわね阿呆使い!未炎を返しなさい!それと竜たちを消しなさい!」

暗黒の魔法使い「フハハハハハ!!私がおとなしくおまえたちのいうことを聞くとでも
        思っているのか!?甘いなアランよ!」

そういうと、暗黒の魔法使いは黒く大きな魔法陣をえがき、
みずさにぶつけてきた。
彼女はそれをひらりとかわした。
が、みずさが振り向いたときには暗黒の魔法使いは不気味な笑いを残して
消え去っていた。
そして




私も連れていかれてしまった・・・




ここは薄暗い・・・
明かりはないか?
そしてこれはどこかで見たことがあるような風景だった。
たしか・・・わたしがキラールになる前、自分の怨念に襲われたときの場所か?
いや・・・待て。
そういえば私は生まれ変わるなんていつあいつに頼んだ!?
里を滅ぼした張本人の暗黒の魔法使いと、なぜ契約を交わし
キラールになったんだ!?
そこの記憶が削り取られているようで、どうしても思い出せない・・・

暗黒の魔法使い「ふっ・・・そこの記憶だけが思い出せないようだな」

私の後ろから黒い影が近づいた来た。

未炎「私・・・確かにヘロンは生き返らせたかったけどお前になんか何も言ってないよ」

暗黒の魔法使い「お前が私の手下になるためにいまからその話をしてやろう」

私は誰がお前の話なんかを、といおうとしたが、暗黒の魔法使いが
さっと手を振り私の口にいつの間にか猿轡をはめてしまった。





暗黒の魔法使い「私はもともと、まだ肉体を持っていたお前がクリムゾンウッドで
        戦っていた時からお前のことを仲間にしようとしていた 
        タイミングはさっきと同じなのだ ヘロンが死んだとき、
        お前の怒りと悲しみは頂点に達する その時だけに魂を抜くことが
        できるのだ」

未炎(つまり、私が一番怒っているときじゃないと魂を抜いて
   連れてくることができなかったんだ)

暗黒の魔法使い「ヘロンが騎士団の奴らに殺されたとき お前は死んだ彼に
        近づこうとした その瞬間にお前の魂ををここに呼び寄せたのだ」

ここは一回私が来たことがあるのか・・・
その後ヘロンは消えてしまったんだな そしてわたしの怨念が・・・
どうやら魂と感情はべつべつになるらしい。
なんだか長そうな話だな・・・



私が死んだタイミングか・・・
なぜそんなときなんだろう?

暗黒の魔法使い「そこまでは順調だった あのまま行けばお前だけでなくヘロンも
        我が物に出来るはずだった・・・」

そういうと、彼の表情が変わった。

暗黒の魔法使い「だが!そこであのデュナスとやらが邪魔をしに来たのだ
        彼はこう言った『彼女はヘロンのことを心から心配している
        だからいまここで記憶を消し去ってしまうのは酷い!』とな・・・」

黒い影は顔を上げた。
フードの中に残酷な2つの炎がともった。

暗黒の魔法使い「そして私は後もう一回だけお前を生き返らせ、ヘロンを復活させる
        ことを許したのだ お前はそのことを私とデュナスから聞き
        もう一度生きることを決めたのだ 私と共にキラールに
        名前をつけたのだ」

未炎(キラール ヴェルガモット オスカー・・・私はヘロンにこれは私だと
   気づいてもらうために私そっくりに人形を作った・・・しかしなぜ
   そこの記憶を消す必要があったのか?)

私の気持ちを読み取ったように、暗黒の魔法使いは
とある書をとりだした。

暗黒の魔法使い「転生の魔法はとてつもない大魔法で私意外には知ってはいけない
        魔法なのだ だが、お前がキラールに生まれ変わるためには
        その魔法の呪文を覚えなくてはならない そこで私はお前が
        呪文を唱え、転生するための儀式を終わらせた後、
        儀式のこともろとも記憶を消し去ったのだ」

未炎(それは外部には漏らしてはいけないことなんだな・・・?ヤツのプライバシーか)

暗黒の魔法使い「お前の記憶についてのことはここまでだ・・・
        もうそろそろ私の部下となるぞ・・・最後に言い残すことは?」

わたしはその時黙ってしまった。
しかし、頭の中ではこんなことを考えていた。
みんなにもう一度会いたい。
私は魔物になってしまうかもしれないけど、
どうかその後わたしを倒してほしいと・・・
それがむりなら・・・せめて。

未炎(ヘロンの顔を見たい・・・)

暗黒の魔法使いには私の考えていることが分かったようだ。
不気味な笑い声を上げると・・・

暗黒の魔法使い「いいだろう!今の彼の姿を嫌というほど見せてやるぞ!フハハハハ!」





わたしはどこかに飛ばされたようだった。
そして、私から少しはなれたところに男がいた。

未炎「ヘロ・・・ン?」

男は私のほうを見た。
彼は間違いなくヘロンだ。
が・・・前の彼とは違った。
片目はいつものように光っている。
だがその光が死んでいた。
どんよりとした顔にやたらとギラギラ見える白く鋭い歯。
全体に何かがおかしい・・・
と、突然ヘロンはニヤッと笑うと、こっちに襲い掛かってきた!!

未炎「な、なにするんだ!!やめろぉおぉぉおおおお!!!」





リュウ「イッテ・・・シマイマシタネ・・・」

私は空の上をぐるぐる回りながら、
暗黒の魔法使いを探しました。
しかし、ヤツは痕跡さえ残さず消えてしまったようです・・・

オチャマル「ミリュウ殿、いったん下へ降りるでござる 作戦会議でござる」

リュウ「ソウデスネ・・・チャクリクシマス」

私は地面へとおりました。
オチャマルと私は元の姿に戻り、みんなのほうへテクテク歩いていきました。

バト「どうする・・・デュナス アウフヘーベン、ヘロンの次には・・・」

雪嘩「きっと阿呆は2人とも自分の部下にしてるでしょうね」

みずさ「問題なのは、ヘロンではなく未炎です 彼女の本当のレベルなら
    私達で倒せますが 阿呆に強化されている上 魂だけですから」

確かに・・・
妖怪になったとすると、
私のご主人様はきっと私達のことを忘れているでしょう・・・

オチャマル「とりあえず、未炎殿の様子をうつせるものはないか・・・」

オチャマルがそっとつぶやきました・・・
しかし、私はそれで大事なことを思い出したのです。

リュウ「ソウデス!!魔法ノ鏡!アレデゴ主人様ヲウツセナイデショウカ?」

奈零沙「そうだけど・・・その魔法の鏡は私達は持ってない・・・」

リュウ「奈零沙サン・・・イママデ黙ッテテ悪カッタンデスケド・・・」

私は羽毛の中から小さな鏡の欠片を取り出しました。

リュウ「ゴ主人様ノ最後ノ鏡ノ欠片・・・実ハ私ガモッテイタノデス
     コレヲ鏡ニハメレバ砕ケタ鏡ノ欠片ハスベテソロイマス」

と、その時、私の持っていた魔法の鏡の欠片がきらりと光りました。
誰かが私達を見ている証拠です。

奈零沙「誰かが私達を見てる!?ほかに鏡を持った人は1人だけ・・・とすると!」

彼女は鏡の欠片のなかを覗き込みました。
しかし、とても小さな破片なので何があるかはよく分かりませんでした。

バト「こんなんじゃ、未炎なんて見えないよ」

オチャマル「バト殿何をいってるでござるか!よく見えるでござるよ!」

どうやら、強い霊力をもつ私とオチャマルには
中がよく見えるようでした。
私は目をこらし・・・

リュウ「ゴ主人様ガミエマシタ・・・ミタコトナイ大キナ剣ヲモッテイマス・・・」

オチャマル「魂の剣でござる!巻物に書いてあったでござる!!」

ご主人様は変わり果てた姿をしていました・・・
私達が暗黒の魔法使いの世界からあの人を連れ戻すときに
着ていたような不思議な衣をまとい・・・
口は耳まで裂け妖怪そのものでした・・・

ミル「問題はどうやってそこまで行くかだよね デュナスがいてくれたら
   いいのにな・・・」

みずさ「何かないかな・・・」

みずささんがそこらを見回した、そのときです。

バト「あ、あれなに・・・!?」

なんと私達の後ろに巨大な黒い渦が出てきたのです!
ブラックホール・・・とでも言うのでしょうか!?

雪嘩「か、風が・・・!吸い込まれる!!」

みんな「わぁぁあああああああ!!!」

このブラックホールがどこにつながっているかは分かりませんが
ものすごい勢いで吸い込まれてしまいました・・・!

どうか、どうかこの出口がご主人様の元でありますように・・・
それと、神様、みんなを守ってください・・・



リュウ「イタイ〜早クドイテクダサイマシ・・・」

う、上にご主人様にそっくりなあの子がのってるつぶれる〜・・・
どうやら私達は阿呆の世界に飛ばされてしまったようです。

リュウ「名前ワカンナイケドハヤクドイテクダサイ!!」

少女「あっ・・・ごめんなさいミリュウさん・・・」

少女は私の上から急いでどきました。

来氷「申し遅れましたが私は来氷というデュアラーです 未炎の知り合いで」

雪嘩「未と来・・・炎と氷・・・対になる名前ですな」

来氷「まぁ、もう1人の未炎とでも言ったほうがいいのでしょうか?」

プレイオンに来氷・・・
ご主人様にそっくりな方々はたくさんいるようですね・・・

ミル「ところで ここどこぉ?」

奈零沙「おそらく、阿呆使いの作り出した世界でしょう・・・ここに未炎さんや
    ヘロンがいるはずです」

暗黒の魔法使い「なかなか鋭いようだな エヴァン」

私達の後ろから声がしました。
なぜ悪役の登場のタイミングはいつもこうなのでしょうか?

暗黒の魔法使い「たった今、私の手下となった未炎の力を試してみたくてな・・・」

みずさ「私達と戦わせようってのね!そうはいかないわよ阿呆!」

アランの少女は暗黒の魔法使いへ矛を振り下ろしました。
しかし、その矛はあっけなく暗黒の魔法使いの阿呆(あ 間違えた)によって
跳ね返されてしまったのです!!

暗黒の魔法使い「ふふふふ・・・何度も言っているだろう お前なんかが私を
        倒すことは出来ないと・・・」

奈零沙「ふざけないでよ!!早く未炎とヘロンを返しなさい!」

暗黒の魔法使い「おろかな人間だな・・・楽しんで消してやろう」

暗黒の魔法使いは魔法陣を描き始めようとしました。
未炎を召喚しようとしているのです!!
彼が黒い魔方陣を描き終わろうとした、その時・・・!

?「やめろぉおおおおお!!!!」

何者かが私の前に降り立ちました。
白い服・・・まさかシグナス騎士団!?

暗黒の魔法使い「リヴセシルか・・・面白くなってきたな」

リヴセシル「お前は 必ず倒してやる!見てろよ」

彼は持っていた剣を思い切り振り下ろしました。
剣は地面に突き刺さり・・・(地面かどうかは分からないけど)
そこにぱっくりと穴が出来ました。

奈零沙「ソウルブレイド・・・!もしや!」

何を思ったのか、奈零沙さんは杖をその穴に差し込み、ぐりぐりとかき回し
穴を大きくしました。
と、次の瞬間・・・!

暗黒の魔法使い「なっ・・・!まさか!」

暗黒の魔法使いめがけて、穴から円盤のような魔方陣が飛び出してきました。
円盤は暗黒の魔法使いの腕をざっくり切り落とし、穴の中に戻っていきました。
そして、その穴の中から出てきたのは・・・

雪嘩「デュナス!アウフヘーベン!」

奈零沙「生きてたぁ!」

デュナス「あのくらいでアシュレイやお前を残して死ぬものか」

アウフヘーベン「それに、今度は仲間も連れてきているし 寂しくないですよ」

カース「久々ねぇ〜腕がなるわ!」

アポストロ「さて・・・本気出していきましょうか?」

アウフヘーベン・アポストロとアウフヘーベン・カースです!!
心強いなぁ!

リヴセシル「僕も参加させていただきますよ!」

暗黒の魔法使い「ハハハハ・・・いいだろう 思い切り苦しめてやるぞ」

暗黒の魔法使いは大きな魔法陣を描きました。
すると、その魔法陣の中から飛び出してきたのは・・・!

リュウ「ゴ、ゴ主人様・・・」




ここで36話。ね、眠いけど絵が描きたーい。
あ、夜になると私って口調かわっちゃうんですかね。