第七話 「危険な洞窟」

ノルダリアは何者かに肩をつかまれた。
身長の高い青年だ。

?「デカイ声を出すんじゃねぇ・・・奴にく、食われるぜ・・・」

ずいぶん苦しそうな喋り方だ。
見たところ、人間ではないようだ。
海賊の格好、長く鋭い爪。
とがった長い耳、青白い肌。口をあけると牙が見える。
目は異様にギラギラひかり、つり目だった。
ダークエルフかなにかだろうか・・・?

ノルダリア「や、奴って?」

?「シッ!!」

青年は2人を抱きかかえ、岩陰に隠れた。

ネロネバルス「ゎ えっち!さわんじゃねぇ!てかアンタ誰!?」

?「黙れ」

見ると、首にロケットペンダントを下げている。
ペンダントには「カイル」という文字と模様が刻まれていた。

ノルダリア「カイル・・・貴方カイルっていうの?」

カイル「そうだけど それがどうした」

カイルの目線の先には、暗闇に浮かび上がる赤い光の点が見えた。
その点は序所に大きくなり・・・暗闇の中から何かが現れた。

怪物「グルルルルル・・・」

マイルコークト「な、なにあれ・・・!?」

カイル「この洞窟に住み着く牛みてぇな怪物さんよ・・・ウィルス感染してるから
    いつも以上に血の気がおおいな」

ネロネバルス「まじ!?ウィルス!?」

マイルコークト「これ完全的にやばいよね!?」

カイル「だから静かにしろ・・・」

牛のような怪物は鼻から緑色の息を吐きながら、
こっちに近づいてくる。

カイル「選択肢は2つだ・・・逃げるか 殺っちまうか?」

ノルダリア「いや、だめ あいつの様子を見ると、逃げ出してもすぐに捕まる」

ノルダリアの嫌な予想は当たっていた。
逃げ出すどころか、何もしていないのにどんどんスピードを上げ、こっちにくる。

ネロネバルス「殺る!!」

突如、ネロネバルスが岩から飛び出した。
背中に背負っていた大剣を抜き、怪物に飛び掛っていく!

マイルコークト「ちょ、ネロ・・・!?」

ノルダリア「ええぃ!こうなったら行くしかないわよね!」

カイル「ヘッ・・・なかなか威勢のいいねーちゃんじゃねぇか」






ネロネバルス「やぁやぁやぁでっかい阿呆!図体だけしてそんなスピード!?」

彼女は完全に怪物をいきりたたせようとしている。
怪物に言葉が通じたかどうかは分からないが、怪物はそれに乗ったように
ネロネバルスに突っ込んでいった。
ノルダリアはすかさず呪文を唱える。

ノルダリア「天を切り裂く氷河の刃よ・・・その冷たい足で踊り狂うがいい!」

呪文を言い終わると共に、地面から氷の塊が突き出た。
その塊は怪物の周りで砕け、破片が飛び散った。
まるでそれはガラスの欠片のようなものだった。




ズシャァァアアッ!




氷の欠片は怪物の左目を潰した。

怪物「グォオオオオオ!!」

牛は狂ったように走り出す。
相当のダメージだったのだろう。

マイルコークト「しずく!女神の涙ッ!」

マイルコークトのスライム、しずくはくるくると回りはじめた。
次第に周りに雲ができ・・・
4人を包み込んだ。
癒しの雨の一種である。
そして、そのあめに触れた牛は逆に苦しみ始めた。
さらに勢いを増し、メチャクチャに走り回る。
そして大剣を構えるネロネバルスに向かって突進していった。

ネロネバルス「!!?」

このスピードでは避けきれない!
もう少しでネロネバルスに直撃すると思った、そのとき・・・!



ダンッッ!



銃声が響き、怪物の動きが止まった。
牛の頭部には大きな穴が開き、緑色の液体が流れていた。

カイル「あばよ かぁいそうな牛のおっちゃん」

牛の真後ろにいたカイルの持っていた銃からは、青白い煙が出ている。
あの硬そうな皮膚を、一発で貫通させたのだ。

ノルダリア「あんた・・・ただものじゃ」

ノルダリアは後ろを振り向き、カイルを見た。
しかしそのときには・・・





カイルは 倒れていた。



                     〜続く〜