第五話 「天使の加護」

ハルチル「ティヤァアアーーーーーッ!!」

光と共に天から舞い降りてきたのはノルダリアの妹、ハルチルだった。
どうやらこの地鳴りのようなものも彼女の仕業らしい。




ズガァアァッッッ!!




ウィルス感染の円の中心のメルダセコイアを硬い岩が貫いた。
その周りから次々に大きな石が飛び出し、
円をつぶしていく。

ハルチル「欲深き大地の精よ・・・今地上に集結し砕け散れ!」

ネロネバルスたちにはきいたことのない呪文だ。
地中から飛び出した岩石は空中で砕け散り、
地面に突き刺さる。
その威力は並大抵なものではなかった。
ついでにネロネバルス達も巻き添えを食いそうになった。




やがて、岩が最後のウィルスに感染した植物を潰し、
あたりは静まり返った。

ネロネバルス「わぉ・・・ストーンヘンジの出来上がりだ」

マイルコークト「これが天使の力なのね・・・」

ハルチル「おねぇちゃん!大丈夫だった?」

彼女はまだ幼い顔でノルダリアを見上げた。
しかし、そのノルダリアの顔つきは厳しかった。

ハルチル「おねぇちゃん?どうしたの?」

ノルダリア「ハーちゃん、家でおとなしく待っていなさいって
      あれほど言ったのに・・・!」

ハルチル「だっておねぇちゃんがピンチってわかったもん!」

ノルダリア「あのねハーちゃん・・・下界のモンスターはハーちゃんが
      絵本で読んだ怪物みたいには易しくないのよ」

ハルチル「だってだって!見たでしょ!?ハーちゃんの魔法!」

ノルダリア「ハーちゃん!だっても糞もないよ!」

ノルダリアがピシャリと言った。
ネロネバルス達はびっくりし、辺りを見回してみた。
岩が飛んできたせいで感染していない植物や遠くの納屋のような
ものまでメチャクチャになっていた。

ノルダリア「ハーちゃんはまだ魔力を制限できないの ほらあの納屋
      にだって人がいたかもしんないじゃん・・・
      おねぇちゃんたちまで潰されそうになったし」

しかし、ハルチルは言うことを聞かなかった。
お姉ちゃん思いなのだ。

ハルチル「だって・・・ハーちゃん・・・天使だもん・・・」

とうとうハルチルは泣き出してしまった。
そんな妹をノルダリアは優しく抱きしめる。

ノルダリア「気持ちは嬉しいよ・・・本当にありがと・・・
      でもハーちゃんを危険な目にあわせたくないの
      おねぇちゃんの言うこと、わかる?」

ハルチル「グスン・・・じゃぁいつになったらハーちゃん冒険
     できるの?」

ノルダリア「この調査が一段落したら、いったん帰るからね
      そしてジェルミレナ村で修行してから、一緒にいこう」

ハルチルはノルダリアの暖かい胸の中でウンウンとうなずいた。
そして、涙をぬぐい、ノルダリアから離れた。

ハルチル「ハーちゃん、一人でうち帰れるからね・・・大丈夫」

ノルダリア「うん わかった いってきてね・・・」

ハルチルは最後に一度にっこりと笑い、
地平線向かって翼を羽ばたかせた。




ネロネバルス「で、さ・・・この岩全部私達が片付けるの?」

マイルコークト「それしかないね」





                           〜続く〜