碧いガラス球 Ⅱ

キィシェルは目をまん丸にして、そのピキを見つめた。
めったに手に入らない、珍しいリヴリー
だが、それ以上にその威圧感にキィシェルは驚いていた。
飼い主の未炎も、一瞬何があったのか分からなかったようで、呆然としている。


ピキ「マナーしらねーのかよ」


ピキ『てめぇみたいなきたねぇリヴリーに触られるとかマジ最悪。死ねよ!』


マナーが知らないのはそっちだ、と言いたいところだが
キィシェルにはまだリヴリーアイランドでのマナーも分からないし、
未炎も成り立てほやほやの飼い主なので、ただ謝ることしかできなかった。


キィシェル「ご、ごめんなさい・・・」


しかし悪口を言われてうれしいリヴリーなどいない。
リヴリーを通して飼い主は謝罪していたが、キィシェルは腹の虫がおさまらなかった。
思い切ってピキの前に歩み寄る。


キィシェル『あっ・・・あの!』


キィシェルは自分より倍もあるリヴリーの前で口を開いた。


ピキ『んだぁ?まだ口答えすんのか?あぁ??」


キィシェル『私は、き、汚くなかんかなですっ!死ねなんて、酷い、酷いよ!」


こんな小さなリヴリーに反抗されて、
意地の悪いピキは一瞬戸惑ったが、
すぐに頭に血が上り、キィシェルを蹴り飛ばそうとした。
が、小さくて身軽な彼女はいとも簡単にかわし、
主人の掌に乗った。


未炎「あれ・・・?どうしたの?キィシエル」


キィシェル『へんっ!君はココまで上ってこれるかい!そんなフサフサな毛じゃ役に立たないでしょ!』


ピキは悔しそうにキィシェルを見上げていたが、
やがて飼い主にしっぽをつままれ、そのまま帰っていった。


未炎「・・・あんな飼い主もいるんだ、嫌だねぇ・・・」


キィシェル『ホント。二度と会いたくない』





自分の島に帰ると、そこにはルリセンチコガネが用意されていた。
未炎が食べるようにとおいておいた物だが、キィシェルは空腹ではなかった。


未炎「あれ?なんで食べないの?」


すかさず彼女はキィシェルのバイオレコードを確認する。
これを見ることによって、今リヴリーがどんな状態なのかがよく分かる。


未炎「そっか、おなか空いてないんだね」


ルリセンチコガネを昆虫のバッグにしまうと、
主人は用事があったようで、アイランドのある部屋から出て行った。





日が落ち、あたりは暗くなった。
キィシェルは、落ち着かない様子で島の中を飛び回っていた。
シンプルで飾り気のないギュニアモデルだが、ヨールの木はなかなか面白い形をしており、
キィシェルの興味をそそった。
草をちぎって丸めて遊んでみたり、木から木へと飛び移ってみたり、
好奇心旺盛の彼女にはちょうどいい遊び場になった。


だが、次第にそれも飽きてしまい、
一日中飛び回っていたのでどんと疲れがのしかかってきた。
まぶたも重くなる。


彼女はそれに逆らおうとせず、長いしっぽをまくらにして眠りについた。